hisano keitaro Architectural Design Office himalaya
Works
物件名
嘉島の家
所在地
熊本県上益城郡
竣工年
2010年
規模・構造
木造2階建て
用途
専用住宅(2世帯)
敷地面積
360.83㎥
建築面積
93.9㎥
延床面積
163.79㎥
撮影
石井紀久
掲載誌
A-style
 
 
嘉島の家コンセプト
敷地は熊本市の隣に位置し、車通勤圏でありながら、周囲を自然に囲まれた、とてものどかな土地です。
施主は30代のご夫婦で、敷地はご主人の生まれ育った場所です。しばらくこの土地を離れておられたましたが、子育ての時期になり、実家を建て直しご両親とともに住まわれることになりました。 要望としては、ご両親との二世帯住宅、それも、お互いの生活を尊重したいという意向から、階を分けて、玄関や水回りをそれぞれ設けた完全な二世帯住宅という依頼を受けました。
設計を始めるに当たってお話を聞いていて、まず感じたことは、当然のことですが、ご家族にとっては様々な思い出が詰まった土地であるということでした。いろいろなエピソードとともに樹木や庭石の話などをお聞きできました。そして自然に恵まれたこの環境で子育てをしたいという強い思いでした。
そこで、まず敷地の大半を占める既存庭を極力保存し、いかにその庭を生かした計画とするかを考えました。そして、各世代の玄関とは別に、庭へのアプローチとなる第三の玄関を提案しました。ご主人が子供時代を過ごした庭(記憶)へ玄関をしつらえることで、完全別な二世帯住宅でありながら、世代を超えた家族としてのつながりを意識できるよう考えました。
各世帯の玄関はあえて目立たないようデザインし、第三の玄関を門として、既存樹木の位置などを考慮してレイアウトし、建物外観上のポイントとなるようデザインしています。第三の玄関は庭への通り抜け縁側となっていて、既存庭に面して設けた広い縁側につながっています。この縁側に面したご両親世帯の和室がこの家の中心です。
子供(孫)達は通り抜け縁側を通っておじいちゃんおばあちゃんの部屋や庭へ自由に行き来出来ます。外と内との中間ゾーンとしての縁側ですので、裸足のまま庭におりて遊んで構いません こうして、新たな世代とともに再生された庭は、縁側やバルコニーを通して、光や風、土や緑のにおいなどとともに生活空間に浸透していきます。そして、新しい世代である孫世代とともに、また新たな記憶を作っていくことを願っています。
また、もうひとつ大きな点として家事動線の効率的な設計があります。キッチンと家事室は背中合わせで配置、バルコニーまでの洗濯物を運ぶルートを家事の大通りとして設定しています。ふたつあるバルコニーのひとつは洗濯物を干したりすることがメインの用途となります。リビングの大きな窓は光を取り込むには十分だが、そこにはルーバー状の雨戸をフィルターとして設け、開口部を保護し、同時に日差しとプライバシーをコントロールしている。新しい世代である孫世代が新たな記憶を作っていく。というシナリオを想定しました。市街化調整区域ではあるが、新たに集落内開発制度が施行されることになり建築が可能になった。