光をコントロールし、日々の生活に豊かな自然を感じる住空間
都会的な条件の中、いかにして自然を獲得するかをテーマに設計された家。
逗子市は海と山に近く、気候穏やかでとても豊かな自然に恵まれている。しかしながら、敷地は駅に近く利便性に富む反面、間口が狭くて隣に3階建てが近接して建つというむしろ都会的な性格の土地だった。そこで、限られた敷地条件の下、いかにしてインテリアにこの地の豊かな自然を獲得するかをテーマに設計をすすめた。
奥行きの長い建物の中心に光の井戸として背の高い吹き抜けた階段ホールを配置。最上部に設けた大きなハイサイドライトから1階まで自然光を導きます。2階リビングからは、さまざまな方向に空を臨むことができるよう開口の位置を工夫。密集した住宅地でありながらプライバシーを確保しつつ光と風を獲得し、自然の変化を敏感に感じることができる生活を演出している。階段ホール上部のハイサイド窓はリビングからでも直接空が見えるよう天井高さや枠の隅切りした形状など細かな検討をしている。道路側に向いては逗子の美しい夕焼けや逗子海岸での花火が見える方向でもあるので、大きな開口部をもうけている。
子供室や寝室などの個室は必然的に1階に配置することになるのだが、子供たちが玄関からすぐ自分の部屋に行けてしまうような計画はなるべく避けたい。そこで、玄関から常に光の井戸である吹抜ホールを通過して個室にアプローチするような配置とし、2階のキッチンを吹抜に面したレイアウトとした。子供たちが帰宅後、吹抜を通る気配をキッチンで感じることができるようになっている。リビングダイニングとキッチンは吹抜けを挟んでいるが、その間に壁はなくひとつの空間の中にあり。キッチンが隔離されるようなことはない。
構造的に間口が狭く奥行きが長い形状の建物は短手方向の構造壁の確保が重要になる。しかし大きな空間を確保したい場合、どうしても壁が邪魔になってしまう。そのため今回の計画では鉄筋の筋交いを露出して使用。構造的な壁としながら閉鎖的にならないよう工夫。構造壁が一体的な空間をさえぎることはない。比較的閉じられた環境のなかで、開口を開けられる位置を吟味し、構造を工夫することで開放的で明るい生活空間をつくりあげた。