緑豊かな敷地に建つ写真スタジオ併設の住空間
並列された居室は、のびやかな土間を通して緩やかに外部とつながる。
この計画は、フリーのカメラマンとして各地を飛び回っている施主の個人アトリエとしての写真スタジオを併設した住居である。
敷地は比較的広く樹木も多く南側には広い庭が確保できた。そこで、庭にむいた外壁はすべて連続したガラス開口部としている。木造でありながらカーテンウォールのようなクールな印象のガラスのファサードを実現するため、柱間とアルミサッシの寸法を厳密に検討され柱と柱の間にそで壁を設けることなく既製品のサッシを取り付けている、構造的に壁が必要な部分には鉄筋ブレースを露出で用い、構造としての強度を保ちながら開口部として見せるなど、既成部材を活用しコスト的、構造的にも理にかなったディテールとしている。外観は高い天井を必要とするスタジオの閉鎖的で大きな四角いボリュームと、南側の住居部分の勾配屋根とを対比させ、住宅の北側に接するようにレイアウトしている。
ひと口に撮影といっても、人物を撮影するだけではなく、小物や料理などを撮影する機会も多く、自然光や添景などをいれながらの撮影もある。そこで、住居空間と密接な関係性のあるスタジオとすることで、より有益で快適な住宅と仕事場の関係がもとめられた。玄関ギャラリーを介して完全に独立した配置としている一方で、スタジオと接したキッチンやリビングなどの居室の壁の一部を大きな引戸とすることで、必要に応じてフレキシブルにスタジオを拡張することができるようになっており、いろいろなスタイルの撮影の要求に柔軟に対応できるよう意図している。また、オープンでフレキシブルなプランであるがゆえ、プライベートな空間を確保することには注意を払った。各居室は通常は壁の中にある扉を必要に応じて閉じることで、個室とできるよう計画されている。
住居部分はスタジオを背にして大きな片流れの屋根が架けられた平屋とし、屋根勾配なりに奥に行くほど天井高さが高くなり空間に変化を与えている。全ての居室は南側の緑多き既存庭に面して並列され、深い軒下の土間を通して庭に開いている。縁側土間と居室の間には中間領域としてとしてモルタルで仕上げられた内土間の廊下がレイアウト。軒先には台風時などに飛散物からの防御としてのルーバー状の雨戸を設けている。この雨戸はスライドすることができ、寝室など庭との間にちょっとした距離を確保したいところなど、生活の中でフレキシブルに移動できる。こうしたデバイスとレイヤーを抜けてきた光は複雑影をおとす。光は時間や季節とともに変化しながら室内空間をきらきらと彩り、生活の中で無意識のうちに時の流れを感じることができる家となるよう考えている。