人と車が安全に共存する配置計画
建物のボリュームを敷地西側にまとめ、駐車場は南側のメイン道路からアプローチしやすい東側にまとめて配置しています。車で通院する人にとってわかりやすい駐車場レイアウトとした上で、歩行で通院する人との動線を明快に分け、安全と利便性に配慮しています。

周辺環境を考慮した上での魅力的な外観デザイン
敷地がある地域は比較的新しい町並みで、整然とした街区に平面的に家並みが広がっています。そこに計画するクリニックの魅力的な姿として、象徴的にデザインされた建物であることを避け、シンプルでソリッドな表情の比較的おとなしめのデザインとし、仕上げの素材感で表現した上質な建物であるほうがよいと考えました。その上で、高さを抑え、大胆にピロティ空間を挿入。奥行き感のある開口部を配置することで建物のボリューム感を軽くすると同時にモダンで魅力的なデザインを目指します。

外壁の仕上げ素材
外壁全体の素材のテクスチャとしては表面が光沢のある素材はなるべく避け、フラットではあるが、なにかしら表情のある素材、ざらつきのある石材、もしくはコンクリートの荒さを生かした表情に塗装仕上げなどをイメージしています。色調は全体を白もしくは明るいグレーとし、ピロティとして欠きとった部分の壁の色調は対比的に黒っぽくすることで全体を引き締めます。このピロティ部分、軒天井素材は濃い色調の板材、石材などが考えられます。

緑が取り囲む建物
街並みとして道沿いに緑が多く植樹されてはいるものの、敷地周辺に限っては広大な駐車場が多く、アスファルトに覆われ比較的に緑が少ない印象があります。そのため、どうしもドライな感じの町並みの印象が強いので、新しいクリニックの周囲には可能な限り植樹をすることで周辺環境に配慮すると同時にクリニックの印象を柔らかいものとして地域になじむよう意図しています。

中庭からの採光
今回の案における最大の特徴として、自然採光にこだわった内部空間を提案します。目に疾患を抱えた患者さんが利用する眼科では、どうしても外部自然光をおさえ人口照明に頼りがちですが、よりよい室内空間を実現するため、緑を配した中庭から室内に自然光を取り入れる計画としています。大小三カ所の外部空間である中庭を建物内に挿入。そこを光井戸として採光をとります。その上で間接照明などを配置しながら機能的で柔らかな光環境をつくっていきます。

快適な待合室
待合室が閉鎖的にならないように視線が抜ける位置に中庭をレイアウト。また北側を大きなガラス面とすることで、直射光は入らず、中庭で反射した光を室内に導かれます。中庭に面した床や壁は大理石などで美しく仕上げ、植樹をします。緑は目にもやさしく風にそよぎます。仕上げとしてはが機能性の問題に配慮しながらではあるが、大理石、木質系やファブリック素材をイメージしています。

構造計画
クリニックという用途上、所要室が多く間取りが小割りで比較的壁が多いという特性があるため、構造形式としてはコンクリート壁構造を選択。適切に構造壁を配置しやすいので、効率的に地震や台風に対する強度を確保できるという利点があります。また、建物が低層であることも地震の揺れを押さるという点では有利です。

設備計画
西側の外壁に沿って、中2階部分に余裕をもってまとまって機会室を確保。最低限の設備ルートで、各室のゆとりのある天井、床下にアプローチできます。また、機械室下部をピロティとしてオープンにすることで、メンテナンス時の作業スペースとなり、また、将来の新しい設備の導入・更新する際には余裕空間となり、サスティナブルでフレキシブルな設備計画を担保します。

ユニバーサルデザインに配慮した計画
エントランスの一番近い場所に身障用パーキングを設置。院内は車いす等でも利用しやすいよう診療スペースはすべて同じフロアとしました。また、適切な廊下幅の設定、手すりの設置、見やすいサイン計画など、誰もが安心して利用できるよう配慮します。

建物構成
提案ではメインの検査室、診察室、手術室などのクリニック機能部分を1フロアにまとめ、2階部分に控え室や各個室などをレイアウトした2層案としています。建物のプロポーションや周囲に対する圧迫感の軽減を考慮した結果ではありますが、将来の医院の拡張性などに備え、敷地に余裕をもたせ3層とする案も考えられます。その場合には、EVなどの設備を整え、手術室機能部分を2階に持ってきて、3階部分に個室を配置することになるでしょう。若干のデザイン処理やプランニング再考は必要ですが、コンセプトはそのままで十分に対応可能です。