hisano keitaro Architectural Design Office himalaya
光を取り込むとは?
住宅を建てるにあたっては、やはり日当たりのいい家を建てたいと、だれもが思うことでしょう。設計者にとって、日当たりとは、すなわち、住まいに光をいかにして取り込むかということです。では、よい日当たりとはどういったことなのでしょうか。
一概に光といってもいろいろな種類がありますが、そのおおもとはひとつの太陽からの光です。しかし、それをわれわれ人間が感じるまでに、雲や空気などいろいろなものに遮られたり反射されたりしながら、結果として、太陽光はさまざまな表情をもって、私たちのもとに届きます。
黒々とした影を落としながら、さんさんとふりそそぐ光。薄曇りの日のように、あたり一面が一様に明るい落ち着いた光。赤く空を染める夕日。はたまた、木々の隙間から漏れ出る木漏れ日や、水面に反射してキラキラ輝く光、などなど。いろいろな美しい情景が思い浮かびます。また特に日本では、薄ぼんやりとしたほの暗さの中での緩やかな光の変化、といったとても繊細な光にも美しさを見いだしてきました。 住まいに光を取り込むということは、そうやって届いてきた光に、さらに最後の仕上げをすることになるのです。
開放的なガラス窓は大量の光を直接取り入れることができます。大きな窓などはあたかも戸外にいるような、空と一体化した気分になれて、とても気持ちのいいものです。また、弱い光もたくさん取り入れることができるので、曇りの日でも明るい部屋をつくることができます。
一方で、軒の深い日本家屋では、古来、庭の白砂や縁側の板床などを反射させ、弱めた光として室内に取り込むことで、部屋の明るさの陰影を穏やかに調整していました。直接光を取り込むのではなく、建物の構成をうまく計画して間接的な光として取り込むという方法です。
新素材メッシュの複雑な光と影
光と影
影も計画しだいで、とても魅力的な要素になります。光はそれ自体まぶしく、直接目にすることが必ずしも快適なわけではありません。光を効果的に見せる方法として、影をうまく使うのです。
たとえば、障子がよい例です。おぼろげな白い和紙の輝きの中に、細い桟のシルエットや、障子に映る樹木の葉の影など、美しい効果を計画するのです。その他にも、それ自体が美しい影を生ずる素材がたくさんあります。グレーチングやメッシュ状の新素材など、本来の用途にとらわれることなく、うまく活用して美しい影を演出することは、住まいの雰囲気を盛り上げるのにとても効果的です。
光の移り変わり
もう一歩踏み込んだ、光の効果もあります。日差しは時の移り変わりと最も関係が深い要素です。時間の経過にともなって影は角度や長さを変化させます。その変化をうまく計画して住まいの中に取り込むというものです。
単純に光を室内に導くというだけでなく、時間までもうまく表現するのです。それを的確に演出できれば、家の中にいながらにしてさまざまな光の変化を楽しむことができます。そうすることで、無意識のうちに季節の移り変わりを感じ取ることができる住まいとなるでしょう。
このように、よい日当たりを実現するためには、太陽光の最後の仕上げとして、どのように光を取り込むかを、計画の初期段階から十分検討することが必要です。そしてなにより、それら光に対しての繊細な心使いとアイデアが大切なのです。
時間の経過により変化する光