大きな屋根に守られた自由度の高い住空間
縁側、中庭、個室群の配置からうまれるスペースがリビングとの距離感を快適に確保する。
この計画は家族5人に加え、将来のご両親の同居も視野に入れ完全なバリアフリー対応が求められている。敷地は閑静な住宅街に位置している。古くからの土地割りのため敷地裏のお隣の土地が接道しておらず、建築不可となってしまったことからおもいがけず土地が広がることになった。そういった経緯で敷地に余裕があったこともありバリアフリーには最適な平屋建てを選択している。
施主との打ち合わせの中では、庭のどこからでも入れた昔の家の風通しのよいイメージや、雨のあたらないスペースの縁側が好きだという思いや、子供たちにもプライバシーが必要な年頃となり各々個室が必要という事情はあるが、理想のイメージとしては家族がリビングに集まって生活がしたいという、相反する思いなどがキーワードとしてでてきた。
そこで、まず平屋の建物3方をぐるりと取り囲む縁側を設置。そのうえで、各個室のボリュームを隙間をあけてレイアウト。その個室群に囲われてできた入り組んだ空間に大きな片流れの屋根を掛けたリビングを提案した。子供室は建物規模に比して少し狭めにし、部屋の一部を個室から出してリビングとの中間ゾーンの「スペース」としている。それぞれの「スペース」には天窓のあいた小さな中庭に配置している。リビングからはいろいろな方向に「スペース」を通して緑が見え、風が抜ける見通しの仕組みとしています。こうして、子供室のプライバシーを確保しつつリビングに家族が集まる生活という、相反する生活のイメージを実現することができた。
大きな片流れの屋根はそのまま天井も屋根なりに勾配させている。水上側では天高さが高くなることでロフトを設置、収納に活用できると同時に、換気用の高窓をつけることで自然な空気の流れをとることもできている。平屋の大屋根を計画する場合、どうしてもプランの中心部分が外壁より遠くなり開口部が少なく暗くなりがちで注意を要する。そこで屋根の一部にスリット状のハイサイドライトを設置している。冬季には奥まで光が届き、夏季には床に光がおちないように厳密に庇や枠のおさまりを検討して寸法を決めている。
両親が同居するための部屋は予備室として玄関の横に配置。外部からのアプローチを容易にしている。部屋のすぐそばにはトイレや浴室などもレイアウト。扉を引戸とすることで車椅子の介護に配慮したしつらえとしている。
家族の場をメインとしながら、風通しのよい自由さと、個人の居場所をも確保した家は大きな屋根で守られている。