hisano keitaro Architectural Design Office himalaya
Awards
くまもとアートポリス 第12回
推進賞受賞
「"B"-studio」
審査員講評
幹線道路から少し入った『"B"-studio』の前に到着した時から、期待が膨らんだ。
応募書類の写真で見た、挑戦的な構えではなく、道路から3mほど後退した建物の配置が、気持ちの良いオープンスペースを住宅街に提供している。九州的な『おおらかさ』とも言える。道路境界を閉じないのだから、ファサードでバリアーを張る意味が、素直に納得できた。半透明な防雪版の、呼吸するようなフィルターが、外部にも内部にも効果的だ。
平面図の乱暴な印象も、内部に入るとポジティブに裏切られる。エントランスの土間とホールの間を、強引に横断する階段は、ギリギリのバランスで成立し、1階奥の空間と上空の空間へ僕たちを誘う。この住宅では、何処にいても家族と外部の気配が、ほどよい『距離感』で伝わって来る。それは断面構成の巧みさと、注意深くセットされた壁と天井の開口部や動線の回遊性、などから来るものだろう。水廻りのディテールの細やかさなど、そのことは隅々まで徹底していて、接写にも望遠にも、充分に耐えうる高性能のズームレンズのようだ。
若い建築家とクライアントが、共同で楽しい夢を実現しているが、お互いが迎合した様子は微塵もない。むしろ確信者の清々しさがある。この住宅を実現するための、施工者や構造設計家の『志の高さ』も、充分に感じられる。その意味で『くまもとアートポリス推進賞』は、今後、構造設計者の名前も表記した方が良いのではないか、とも思った。
(武田光史)
くまもとアートポリス
推進賞顕彰事業主旨
熊本県は、環境デザインに対する関心を高め、都市環境並びに建築文化等の向上を図るとともに、世界への文化情報発信地「熊本」を目指し、後世に残る文化的資産を創造するため、「くまもとアートポリス」を推進しています。
この事業の目的を達成するため、コミッショナーが国の内外から推薦した設計者を参加事業主に紹介するプロジェクト事業や各種のイベント、広報事業等を行い、さらに幅広く県民の皆様の御理解を深めていただくため、平成7年から「くまもとアートポリス推進賞」の表彰を行っています。
この賞は、質の高い優れた建造物等を顕彰することにより、県民の環境デザインに対する意識の高揚と都市環境並びに建築文化等の向上を目指し、併せて豊かな地域づくりを図ることを目的としています。